糞土師&トビ座の「中卒トリオ」が底辺から仰ぎ見る、この楽しき世界!

同志に出会えた、だから結婚した

ーー2人は秋田で知り合ったんですよね。

佑之助 一昨年、秋田で楽市楽座の「赤い靴」という芝居を見たときに萌と知り合いました。

その数日後、僕が山梨へ帰るのと楽市楽座が山形へ移動するのが同じタイミングで。夜行バスに僕が乗るときに萌が見送りに来てくれて、連絡を取り合うようになりました。

 私にとって、初めて同志に出会ったという感じだったんです。周りに中卒の人があまりいないから。不良で高校行かねえよっていうのではなく、自分で行かないと決めて。

佑之助とは、食品添加物や放射能や政治のことなど色々話せて、同じ年でここまで話せる人はいなくて嬉しかったです。

 ーー楽市楽座は旅を続ける人生。つまり2人が一緒にいるためには佑之助さんが劇団に入るしか選択肢がない。そこに葛藤はなかったですか?

佑之助 10年間も家族3人で旅芸人をしてきた人たちと、まだ芝居すら見たことがない僕。楽市楽座の劇が生まれて初めて見た芝居で、そんな僕が仲間に入っていいのか、セリフを覚えられるのか、人前に出られるのか、3人のままのほうが良かったと思われないか……などと考えました。

 つきあい始めた頃、佑之助も旅について行けば一緒にいられるのにねって話していて。手伝いで入ったらいいと考えていたら、私の両親が「スタッフはいらない。ついてくるなら役者やらないとダメでしょう」って。

佑之助 役者をやることについて最初に言われたとき、「いやいやいやできません」って流したんです。でも萌のお母さんが「ちゃんとはっきりしたほうがいい」って。

 母が、佑之助の口から父に「旅について行きます。芝居もします」と言ったほうがいいって。佑之助が当時17歳だったので、18歳になったら結婚を考えていることも言おうと決めて。実際それを両親に言ったら、お母さんは後ろにどひゃーと倒れちゃって、お父さんもお箸をポロっと落としちゃって。

佑之助 そうだったなあ。本当は翌年伝える予定だったのですが。そのときは原付きで山梨から公演先の熊本まで萌に会いに行って、会ったらなんか言う流れになりました。

伊沢 原付きで熊本まで会いに……すごいね。

 人生経験が豊富な年配の方から、「佑之助はあまり饒舌ではないけれど行動で示しているから信用している」と言われたりします。

伊沢 口先だけの人はいくらでもいるけど、行動で示せる人って少ないんだよね。

ーー今、日本ではほとんどの人が高校に進学します。珍しいと言われませんか?

佑之助 地元の友達の親からも「人生終わったね」と言われました。うちの中学を卒業した162人中、161人が高校進学、1人が就職と資料に書いてあるのを見て、この1人って絶対僕だって(笑)。

 私も同じです。卒業後の進路は進学か就職じゃないとだめなんだと思いました。

佑之助 二択しかない。僕の友達が、僕がやっていることを見て「いいなあ」と言ったんです。それで自分も高校に進まず好きなことをやりたいと親に話したら、「あの佑之助っていう子に洗脳されてるんじゃないの?」って言われたらしいです(笑)。

伊沢 高校中退の糞土師も中卒と同じようなものだけど、「伊沢の息子は気が狂った」と言ってる人がいたと友人から聞かされたよ。でも高校を中退したからこそこうなれたんだと、今ではそれが誇りなんだけどね。

ーー世間の一般的な道から外れて生きていると、反骨精神が生まれたりしますか?

佑之助 それはあんまりないです。人に理解されようとか全く思っていなくて。

伊沢 無責任な他人の評価よりも、自分で納得できるかどうかだよね。