糞土師&トビ座の「中卒トリオ」が底辺から仰ぎ見る、この楽しき世界!

萌・佑之助(旅芸人)× 伊沢正名(糞土師)

日本全国を旅しながら野外で投げ銭芝居をする「楽市楽座」は、家族3人の小劇団。その1人娘の萌さんが旅の道中で佑之助さんと出会い、19歳新婚ユニットの「トビ座」を結成! 記念すべき第1作目の「土のアワ」はウンコとキノコとカニの物語。糞土思想のエッセンスが見事に表現された芝居を観て、伊沢さんは感激しました。

 

ウンコの芝居を書くため、糞土師の家を訪ねた

 ーー脚本を担当した萌さんは、なぜウンコを題材にしたのですか?

 2017年に楽市楽座で「小さなお化けたちの森」という芝居をやり、ウンコロガシというウンコのお化け役を私が演じました。

舞台に出た瞬間にお客さんから「ウワー!」って笑いが起きて、「殺して食べる生き物よりも、死骸やウンコを食べる生き物のほうがずっと多いのよ〜」と歌ったのもすごく喜んでもらえて、またやりたいと思っていたんです。ちなみにその劇の脚本は私の父が書いたのですが、伊沢さんの存在を知りその役を思いついたそうです。

それで私も伊沢さんの本を読んで、「死ぬ時は土に還りたいから、山に籠った私を探さないでください」と書いてあるのが印象に残りました。死の捉え方が面白くて。今回の劇を作るにあたり、ぜひご本人にお会いしたくて、知人のつてをたどってご連絡しました。

伊沢 死って普通は扱いたくないテーマだけど、昨夜のトビ座の芝居では死体やウンコが登場してそれが再生していった。命の循環の本質をよく理解して劇にしてくれたのがすごく嬉しかったよ。

萌さんが描いた「土のアワ」のチラシ

 ーー「ウンコおいしい!」というセリフから始まる劇は衝撃でした。

伊沢 衝撃的だったね。こんな劇になるなんて想像できなかった。

 昨年末に伊沢さんのお宅でお話を聞けてよかったです。

伊沢 萌ちゃんが帰りがけにトイレに行きたくなって、夕方薄暗くなったうちの庭でノグソしたんだよね。そのとき、この子いけるなって思ったよ。ぜひまたうちに来て掘りあげてほしい。初夏になれば分解が終わって味見までできるよ。ところで1年間に何日くらい旅するの?

 7ヶ月くらいです。1年に1本のオリジナル劇を作って、旅しながら84回くらい公演します。

伊沢 今年はどんな芝居をするの?

 「風に吹かれて」という砂漠が舞台の芝居です。佑之助がサソリ、私がオウム、父がラクダ、母がナメクジを演じます。初夏から全国を回ります

コロナの影響で、楽市楽座の今年の旅公演は延期になりました。1年かけてさらに芸を磨き、新作「風に吹かれて」を練り上げていくとのことです。