糞土師&トビ座の「中卒トリオ」が底辺から仰ぎ見る、この楽しき世界!

ーー「土のアワ」で、芸の道で生きる覚悟を2人から感じました。普段から意識的に考えていますか?

 佑之助は今はここにいるけど、まだこの先何したいかは……ね?

佑之助 農業というと、一般的には生産という考えになるのですが、自分にとってはそうじゃなくて、生きていくため。少しでも自分のものは自分で作ることを目指した農業。

そういう意味での農業は今後もしたいですが、萌は芝居が好きで今もやり続けている。そこはいい感じに上手くやっていけたらいいねとお互い話しています。

 あるご夫婦から、「夫婦というのは1人でできないことをやるのがあり方じゃないか」と聞いて。私たちもお互いできること、やりたいことを、どういうふうに面白く混じり合わせられるかっていうことかなって。

伊沢 2人は本当にいい相手と出会って、これからもっと大きく花開く予感がするね。

 

高校へ行かなかった理由

伊沢 萌ちゃんは小さいときから家族でやってきたけど、佑之助君は全然違うところから入ってきた。もともと社会に対してこういう考え方は持っていたの?

佑之助 そうですね。僕は山梨で生まれ育ったのですが、中学卒業後は高校へ行かず、山梨を出て農業をやりました。

中学3年生の2学期までは普通に良い高校に行って良い仕事に就こうと考えていたのが、部活動が終わり、いざ同級生が受験勉強に向かうようになったら、自分はこのままでいいのかなと思い始めて。みんなが行くから、目的もなく高校へ行くことに意味があるのかなって。

僕の両親は自営で塾の先生をやっていて色々な生徒さんを見ている中で、僕がイヤイヤ勉強している姿に「行きたくなければ高校へ行かなくてもいいんだよ」と言ってくれました。

それで考えて、食べるものを自分で作りたいと思い農業へ進みました。秋田の農家さんや、知人のつてでニュージーランド(NZ)の会社でも少し働かせてもらったんです。

伊沢 NZは写真の仕事で何度も行ったことがあるけど、とてもいいところだよね。

佑之助 はい。NZではコーヒーの面白さにはまり、もっと勉強したくなりました。帰国後山梨のコーヒー屋で1ヶ月勉強し、東京のコーヒー店にも履歴書を送ったんですが全てダメで。

どうしようかと思っていた矢先、以前働かせてもらった秋田の農家さんから草取りが忙しいと聞いて手伝いに行きました。

伊沢 ほんの数年間であちこちへ移動して色々なことをやってきたんだね。

 佑之助はもともと信念がすごく強くて頑固です。中学を卒業するときに先生から、「お前だけ高校に行かないんだからみんなの前で何かしゃべれ」と言われて、「日本の食糧自給率はとても低く、別に学校に行って東大を出ても就職できない人もいるし、僕は自分の食べるものを作りたいから秋田に行きます。別に理解されなくてもいいんです」と話したそうです。

伊沢 今の人は他人の目ばかり気にして生きていると思う。でも理解されなくたっていいんだよ。みんな自分を殺して他の人の反感を買わないようにってやっているけど、それがいかに馬鹿馬鹿しいか。

糞土師言葉に「良識は八方美人の自己保身」というのがあるんだけど、私も佑之助君と同じ考えだよ。