最期は獣に食べられたい(前編)

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服部文祥(サバイバル登山家)×伊沢正名(糞土師)

登山家の服部文祥さんは、「自然に対してフェアでありたい」と登山道具を持ち込まない「サバイバル登山」を追求し、山行中は、夏は毛バリ、冬はライフルで食糧を現地調達します。

狩猟は野生動物の命を奪う行為であり、ノグソで命を返す糞土思想とは一見真逆なようにも映りますが、食とウンコは表裏一体。そこにこそ共生と循環のカギがあります。獲って生きることに真剣に向き合ってきた服部さんに「共生」と「しあわせな死」についてお話を伺いました。

 

ライフル使用はずるいのか? 

伊沢 服部さん手作りの鹿まんじゅう、とても美味しいです。いつどこで獲った鹿ですか?

服部 2020年3月4日山梨県です。メス鹿の腹皮という腹筋あたりの部位ですね。

伊沢 鹿肉まん贅沢です。

服部 鹿なら、一日出猟すれば、一頭は獲れるので、皆もやればいいのにと思います。狩猟はアドレナリンが出る興味深い行為ですよ。ただ、山から下ろして解体する工程は大変です。

伊沢 ライフルは現代文明の利器で、それを使った猟に私はちょっと抵抗を感じています。火縄銃まではなんとなく許容できるのですが……。銃猟と自力のバランスを服部さんはどうお考えですか?

服部 鉄砲という道具は、自力ではないと思っています。とくにライフルは非常にずるい。その一方で、面白くて魅力的な道具でもあります。

伊沢 でもライフルを否定したら、ひとりで山を歩いて狩るのは難しくなりますよね。

服部 散弾銃を使っていいならライフルとほぼ同じだけ獲れますね。火縄銃はどうかな? 狩猟って結構ローカルな行為で、例えば罠だと猟場近くに住んでいないとできないのが現実です。私のように猟場近くに住まずに時々行くのであれば、鉄砲が必要になりますね。

ただ罠ならフェアなのかというと、そうとも言えない。ライフルは精度威力ともに動物の能力を遥かに凌駕するズルですが、罠も自然界には存在しない頑丈でしなやかなワイヤーを使っていて、24時間稼働し、獲るまでは労力がほぼかからない。罠は罠でずるい面もあります。

伊沢 厳密に考えたらそうなりますね。

服部 ただ、火薬とライフルの性能は本当にすごい。指の動きだけで重金属の塊を音速の三倍で正確に飛ばすあの威力はズルです。見える範囲に獲物が立ち止まっていればほぼ銃弾を撃ち込める。撃つ瞬間は集中しているので考えませんが、当たったあとには、いつも「これはすごい道具だな」と思います。

伊沢 アドレナリンのようなものが出ている?

服部 そう思います。獲物に出会った瞬間に、狩る側としての集中力が一気に上がる。労力もお金も時間も注いできて、狩りたいという欲もある。トータルすると膨大なエネルギーを猟に注いでいるわけで、チャンスが来た時は余計なことを考えず、結果を出すことに集中している。

伊沢 写真のシャッターチャンスと同じで、その一瞬に賭けるんですね。

服部 その集中具合は、狩った後に獲物に会った瞬間から撃って倒れるまでの映像が何度も何度も頭の中でリフレインするほどです。

外した時も実は同じで、何一つ証明する証拠は残らず、自分でも白昼夢だったのかなと思ったりしながら、頭の中で出会いから逃げられるまでの映像が流れ続ける。「あとワンテンポ待って撃てば良かったな」とか、ずっと引きずってしまう。