「生ききりたい」(前編)

家事は暮らしの基本

伊沢 今日出していただいたこのお菓子、亮之介さんの手作りなんですよね?

亮之介 小豆と栗のスイーツです。砂糖控えめで作ったので、ぜひどうぞ。

淳子 もし食べて舌に刺激があったら残してくださいね。

伊沢 ありがとうございます、いただきます。普段から亮之介さんが料理をすることが多いのですか?

淳子 うちは私がずっと稼ぎ頭だったので、夜仕事から帰ってくると、在宅でイラストレーターをしている亮之介がご飯を作ってくれる生活だったんです。

伊沢 私は離婚してから家事を全部やるようになったのですが、やっぱり大変だなって。家事は一番の生きる基本ですよね。

淳子 はい。生活であり、暮らしの基本ですね。

新婚当時、亮之介さんとインドを旅した

伊沢 淳子さんは今、日々の中で色々なことを考えていらっしゃいますか?

淳子 あんまり考えない。ばかなのかもしれない(笑)。

亮之介 淳子が今年の2月14日に医者にガンだと言われて以来、少なくとも俺の前でおおっぴらに泣いているのを見たことがない。

淳子 猫が死んだときは泣いたよね。

亮之介 そう。だからすごいなあって。まあ1人で泣いているかもしれないけれど。俺も1人では泣いたことある。

話はずれるかもしれないけど、ガンって言われたら確かに最初は死を連想するけど、時間もあるし治る人もいるし、色々なことがあるから、直線で死というふうに俺は思わないようにしてます。ガンの先には死があるかもしれないけれども、それがいつ来るのかは人にもよる。でも医者は統計的に計算するんだけど。

淳子 医者はすぐ数字を突きつけるんだよね。

亮之介 だから目標を作ってそこまで頑張ろうっていうのもそれはそれでいいと思うけど。わからないから、1日ずつやっていくしかないかなって思うね。

伊沢 その1日を有意義にって思うよね。私の場合はもうすぐ死ぬかもしれないって思ったから、やるべきことをもっと一生懸命やろう、余計なことはやめようって思った。

亮之介 でも、より有意義にという感じでもないよね。

淳子 全然有意義じゃない(笑)。

インドにて