「生ききりたい」(前編)

「死=負け」というイメージがある

淳子 とにかく極端に傾きすぎていますよね。生きるほうに。

伊沢 そうそう。誰だっていつかは死ぬわけだし、だからもっとプラスに持っていきたいんです。でも今回淳子さんに手紙を書いたときに、やっぱり嫌がられるかなあって不安だったんですが。

淳子 いやいや、光栄でした。

旅先の福島で出会った男の子と

伊沢 世間一般の常識で考えたら嫌がられるけど、淳子さんだったらわかってもらえるかなって、ちょっと思っていました。淳子さんが書かれた「生ききりたい」が、本当に私にとって大きなきっかけになりました。あの文章がなかったら対談のお願いも言い出しにくかったんですが。

亮之介 あれは反響が色々とありました。

伊沢 大きかったと思います。

亮之介 手紙とかもね。

淳子 うん、色々いただいて。

亮之介 みんな何だろう、やっぱり触れたくないけど、どこかでは考えてる。

伊沢 ウンコもそうなんですよね。世間一般では堂々と話さないけど、講演会で場を作ると、みんな嬉しそうに話すんです。

亮之介 死というのは、負けるというイメージができちゃってるから。

淳子 できてますよ。勝ちか負けかみたいな。全てが。

伊沢 私なんか、食べることとウンコでどっちが大事だって考えたら、7:3でウンコ。

淳子 あはは。5:5じゃないんですね。

伊沢 それを生と死に当てはめたら、死ぬことのほうが大事だと思うんです。死というものをきちんとつかめば、むしろ生き方までちゃんと見えてくると思うんですよ。

淳子 確かにね、ちゃんと死というものを考えたら、AIに全てやらせて、残った時間で人間がゲームするなんてこともなくなりますよね。

伊沢 そうですよ。それが一応見えてきた。でも、それを受け止めてくれる人がどれだけいるかなあって。

後半へ続く>

(写真提供/長野亮之介、構成/大西夏奈子)