「生ききりたい」(前編)

当たり前だった快便のすばらしさ

伊沢 淳子さんは以前はすごく快便だったとのことですが、抗ガン剤の影響で腸が変わったのですか。

淳子 抗ガン剤の副作用で下痢がひどくて。まさかこんなに苦しめられるなんて想像できなかったです。手術すると腸内環境がいったんダメになって、抗ガン剤で腸内細菌も死んでしまうそうです。病気になるまでは立派なウンコしてたんですよ。それこそ人に見せたいくらい立派な。

亮之介 昔1回見せられたよ。「つ」の字みたいなのを。

淳子 でも病気してから全くない。だからウンコは本当に大事です。

亮之介 すごく良い便をスポンってした後って、はあ〜っていうのがあるでしょ。温泉に入ったときみたいな。今はそういう爽快感がない。

淳子 ないない。自分でコントロールができないのが辛いです。

亮之介 今一番苦労しているのはウンコだよね。それがなければだいぶ違うよね。

淳子 なければ好きなところに旅行も行けるし。急にくるから。歩きながらもらしちゃうとかもありますもん。トイレがそこにないと。

仲間たちとキャンプ

伊沢 講演会でいつも言ってるんだけど、非常事態になって初めて、みんなウンコの重要性に気づくんですよね。ところでオムツとかはどうですか?

淳子 オムツは嫌いなんですよね。

亮之介 人生において排便環境は大事だなとつくづく思う。

伊沢 排便ってそうですよね。だから快感の面から糞土思想を広めようとしています。

亮之介 快感ですね。なんであんなに気持ちいいのかって思うけど。

淳子 そう、だからウンコを自分でコントロールできない日が来るなんて。食べて出すことが生きることの基本だなって本当に思う。

伊沢 ところが世間では食べることのほうにしか意識が向いていないんですよね、「生きること=食べること」になってる。

もし災害でトイレが使えなくなったら、食べ物がなくて我慢する苦しさよりも、ウンコが出せないほうが辛いはずです。生きることって、むしろ出すことのほうが大事なんじゃないかと思います。

淳子 食べることのほうが、目に見えるし欲望とも直結していますよね。

伊沢 社会的に金にもなるしね。ウンコの問題って金にならないんですよ(笑)。そのへんが弱い。