「地球永住計画」に学ぶ、足もとに広がる地球の奇跡的な素晴らしさ

地球は鉄の惑星 

――地球の一部は鉄でできていると聞きますが、どのくらいの割合なのですか?

関野 33%です。山に行くときにコンパスを使えるのは、地球が磁石だからです。太陽から太陽風というものすごいエネルギーが放出されると地球に微粒子が飛んできますが、そういうものを地球の磁場がはね返しています。磁場が微粒子を跳ね返している現象が地上から見えます。それがオーロラです。

伊沢 磁場のおかげで地球上の生き物は守られているんですね。

関野 もし人類が火星に行ったら、男女ともに子どもができなくなります。大気圏外に出ると、宇宙線や放射線で被爆し、強い紫外線にさらされます。だから磁場があるというのは大変なことなんですよ。

面白いのは、太陽系の磁場は太陽自身が作っていること。我々が住んでいる天の川銀河には2000億の恒星があると言われ、太陽系はそのごく一部です。天の川銀河の中心からも強烈な磁場が出ていますが、太陽系の磁場がそれをはね返しているんです。

伊沢 はあ……脳みそがパンクしそう……。

関野 太陽は脅威ですが、もっと大きな脅威から守ってくれてもいるんですよ。地球の話に戻りますが、鉄は一番安定した元素で、最終的にはみんな鉄になってしまうのではないかと言われるぐらいです。

私たちの血液にはヘモグロビンがあり、鉄が完全に人間の体から消えると10分も生きられません。

伊沢 酸素を取りこめなくなるんですね。

関野 ヘモグロビンが臓器や筋肉に酸素を送りこんでいます。そして鉄は、文明にとっても重要です。

伊沢 鉄器ですね!

関野 人類の中で、プラスチックやガラスや金や銀を必要としない人間は現在でも何億人といます。しかし、鉄を必要としない人間はゼロだと僕は思います。1975年までニューギニアに石器のみで生きていた人たちがいましたが、今はいません。一度鉄を使うともう戻れないんですね、あの固さと鋭さが便利すぎて。

実は、魚も同じなんです。気仙沼市に畠山重篤さんという牡蠣の養殖をしている方がいます。海の幸で生計を立てているのに、山で植林をしています。

伊沢 森を作って、その養分を海に流している方ですね。

関野 そうです。でも養分ではなく鉄なんですよ。彼は上流で木を植えていくと、牡蠣がどんどん大きく育つことに気づいて、そのメカニズムを北海道大学の研究者に調査依頼したんです。

そこでわかったのは、木を植えると腐葉土ができて、フルボ酸という酸ができること。海にいる植物プランクトンは、上流から流れてくる鉄粉を餌にしているんです。でも酸化した鉄は粒子が大きすぎて、プランクトンは食べられない。

ところがフルボ酸が先に鉄にくっつくと酸化できなくなり、プランクトンは食べることができるんです。そのプランクトンを牡蠣が餌にするので大きくなる。

伊沢 へえ……。

関野 関西空港ができるとき、漁師たちは失職するからと建設に反対しました。しかし数年経ってみたら、関空の周りに魚が増えた。なぜかというと鉄骨から鉄が溶け出し、魚が寄ってきたんです。ほとんど魚がいない海に鉄粉を撒くと、魚が寄ってくるということです。