安田陽介(野生食材研究家)× 伊沢正名(糞土師)
関西の予備校で日本史の講師をしている安田陽介さんは、ベジタリアンであり縄文研究家でもあります。『くう・ねる・のぐそ』(山と渓谷社)の出版直後に安田さんがブログに書評を書いてくださったことがきっかけで、私(糞土師)と安田さんとの交流が始まり、ベジタリアンや縄文的な生き方について意見を交わすようになりました。
『くう・ねる・のぐそ』が縁の出会い
伊沢 安田さんはなぜ『くう・ねる・のぐそ』を読もうと思われたんですか?
安田 僕はもともとキノコが好きで、『キノコの不思議』(森毅編、光文社)という本の中で森先生と対談されたキノコ写真家の伊沢さんがノグソをしていると語られていて、興味を持っていたんです。
その伊沢さんが書いた『くう・ねる・のぐそ』をたまたま本屋で見つけて、以前から僕もノグソに興味があったのですぐ買いました。
伊沢 『くう・ねる・のぐそ』を2008年暮れに出して、翌年の1月5日に安田さんがブログに書評をのせてくれました。そこに「2008年の本でベスト1」だと書いてあって、命を返すということをしっかり理解してくれたのが嬉しくて。
私に対する見方の多くは、ノグソを趣味でやってる変なオッサンというものなんだけど(笑)。安田さんはなぜノグソに興味を持っていたんですか?
安田 昔から父親とよく山歩きをしていて、山の幸を探したり採集するのも大好きで。地元の大文字山もしょっちゅう歩いて、自然や命の循環について考えていたんです。
それで自然に腐るゴミは燃やすのではなく、本当なら土に帰すべきだと思っていて、さらに考え続けていくとウンコや死体をどうするかという問題に行き着いて。だからトイレよりノグソがいいと思っていたのですが、実行が伴っていませんでした。
伊沢 実行が伴わなかった理由は、穢れという意識があったから?
安田 穢れや批判の意識はなくて、毎日ノグソのために山に行くのは大変だという労力的なことが理由です。当時の自分は食べたらすぐ出したくなる体質で、その都度山へ行くことが難しかったんです。
伊沢 そうですか。安田さんと実際にお会したのは2010年が最初ですね。私が大阪で講演会したときに来てくれて、そのあと一緒に京都まで移動する車内で話してね。
安田 電車でずっとノグソの話をしていましたね。
伊沢 そう。それで糞土研究会にも入会して、翌年には職場の予備校で私の文化講演会を企画してくれて、トントン拍子に色々なことが進みました。