水洗トイレは、ウンコと自然を切り離す?

洋式トイレは便秘の元

熊倉 最近は和式のトイレを使えない子どもが、結構多いんですよ。

伊沢 そうそう、洋式トイレに座ってしかできないんですよね。でも、和式が一番自然な排便スタイルのはずなんですけどね。

熊倉 私も調べたことがあるんですが、洋式スタイルは便秘の元とも言われています。

「別に和式スタイルができなくても困らないじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、山に行ったら和式スタイルができないと、やっぱり困ります。サバイバルを経験した子どもは強いので、子どもに生きる力をつけるためにも、トイレがないところでも困らないように、アウトドア・トイレ指導なんかも、これからやっていかねばと思っているんです。

伊沢 和式スタイルができなければ、ノグソもできないですからね。

熊倉 そうですね。ただ、伊沢さんのお話に共感しても、なかなかノグソってハードルが高いと思うんです。そんな時に、循環型トイレという選択肢があることが重要なんじゃないかと思っていて。土壌がなく、ノグソができないような山岳地であれば、持ち帰れる携帯トイレもありますし。

そのためには、衛生面ばかりを重視する、世の中のトイレに対する意識を変えていくことが非常に大切だと考えています。もし、実際に「環境にやさしく災害にも強い循環型トイレを選ぼう」と考える人が増えれば、TOTOだって慌てて循環型トイレを作るはずですよ。需要があれば、メーカーはつくるわけですから。

伊沢 土に還すのがノグソ本来の目的なので、こんな選択肢があったのかと、知ってもらうことも重要です。

熊倉 本当にそう思います。実は環境省の職員向けに、実際に山で携帯トイレを体験することを目的とした山行をやったことがあるんです。環境省の自然保護官であっても使ったことがないという人が結構いたので。そこで感じたのは、みんな一回でも経験すれば抵抗がなくなる、ということ。こういった講習会をすれば、山での携帯トイレ利用率を向上させられるし、災害時のトイレパニックも緩和できると思いますね。

続いて、浄化槽の清掃体験や、バイオトイレをはじめとした循環型トイレが設置されている現場を見に行くツアーをやりました。環境省の職員でも、浄化槽のしくみや循環型トイレを知らない人もいますので。こういったツアーを企画すると、みんな意識するようになってくれるんです。

熊倉さんは環境省でも、トイレ問題の提言を続けている。