知識より、自分の感覚を信じよ。

ワクワクを分かち合うのが教育だ

伊沢 ここまで世の中がおかしくなってしまっているいま、残る希望は教育だと考えているんです。オヤジの私がいうのもなんですが(笑)、頭が凝り固まったオヤジに変化を期待するのは難しい。だったら柔軟に物事を捉えられる子どもたちに、自然の尊さを伝えたいと。その点高田さんは、このダーチャフィールドで子どもたちに自然体験を提供していますよね。手応えはどうですか?

高田 手応えはすごく感じますね。自然の良さってやはり、大人より子どもの方が、感覚的に理解できるんですよ。荒れた森では、子どもはどうしたらいいか分からず佇んでしまうのですが、良い環境の森なら勝手に走り出しますからね。

「最近の子どもは外で遊ばなくなった」なんて言われるけれど、大人がその環境を提供できていないだけですよ。ここではドラム缶お風呂体験や、味噌作り講座など、いろんなイベントをやっていますが、みんな親が帰ろうって言っているのに、「まだ帰らない!もう一回焚き火やろう!」って(笑)。

伊沢 素晴らしいですね。体験を提供する側として、気をつけていることはありますか?

高田 あえて子ども向けの言葉遣いではなくて、大人と同じ言葉で話していますね。それでも子どもは、きちんと理解してついてきてくれますよ。そもそも、大人が一緒に楽しんでいるというのが、子どもにとって一番嬉しいし、安心感になるんです。だから、大人がまず一緒に楽しむ、ということを大事にしていますね。

ダーチャフィールドでの自然体験の様子。

 子どもたちには、動物の土葬も一緒にやってもらいます。ダーチャフィールド前の道路では、タヌキが車に轢かれていることなんかも時々あって。「みんなはどんな土に、どんな風に埋めてもらえると気持ちいいと思う?」と子どもたちに聞きながら、埋める場所を探します。

 大地に還りやすい形で土葬すればハエもわかないし、近くの木も動物から栄養をもらってイキイキしてきます。その循環の摂理を、子どもたちには感覚として知ってほしいなと。

 と、偉そうなことを言っていますが、結局私たち大人も楽しいんです。体験してもらう喜びはもちろん、次はどんな企画をやろうかな、今回はどんな発見があるかなって、私も毎日ワクワクです(笑)。そのワクワクを分かち合うのが、子どもにも一番伝わる方法なんじゃないかな。

伊沢 知識よりも、ワクワクで伝えると。良い言葉をいただきました。

 私は今、糞土思想を広めるための「糞土塾」を始める準備をしています。60坪近くある古民家の母屋を改修して、色々なイベントや宿泊講座が出来るようにします。そして数年前に近所の林を購入したのですが、そこでは野糞の実習や掘り返し調査だけでなく、子どもたちが遊びを通して様々な自然体験が出来るように、林の手入れを始めました。

 実は経験豊富な高田さんに、母屋の庭や林をどのように整備したら良いのか、一度見に来ていただきたいと考えています。ぜひ、よろしくお願いしますね。

(執筆・編集・写真:金井明日香)