バイオトイレ、設置は法律違反?
熊倉 それでも諦めきれず、別の角度から提案は続けました。1回目の提案は、災害時のトイレ。断水状態の時でも使える携帯トイレとそのマニュアルを、最初から全トイレに配備しておくのはどうか、と。
また、教育の一環として、学校の校庭に循環型トイレを配備してトイレ教育を実施することも提案しました。その中で、自分たちのし尿を堆肥にして野菜を作り、みんなで食べる。災害時に学校は避難所になりますから、自己完結型のトイレがあると役立ちますしね。それに、あえて「ウンコを水に流さず活かすトイレ」の仕組みを、水洗トイレメーカーのTOTOが教えるのは、意義があるんじゃないかと。でも、結局受け入れてはもらえませんでした。
2回目の提案は、山岳地などのトイレに設置されているセパレート便器。セパレート便器とは、大便と小便を分別することができる便器のことです。都心のような人が密集して暮らしている地域では、下水道が完備されていて、大便と小便を分ける必要はなく、一緒にして水で下水道へと流します。
一方で山岳地に設置したバイオトイレなどでは、大と小は分離できた方が都合が良いんです。ですが当時は国産のセパレート便器がなく、山小屋の経営者の方から外国製のものはうまく機能していないと聞いて。便器を作らせたら世界一といっても過言ではないTOTOが、その開発に携わってみてはどうかと提案しました。ですが、この提案も通らず。
3つ目は、浄化槽の見直し。浄化槽とは、下水道が整備されていない地域で、各家庭で個別に汚水をきれいにする装置のこと。だから下水道で汚水を処理する地域と、浄化槽で処理する地域は、棲み分けされているんですね。ですがたとえば災害で下水管が破損してしまったり、終末処理場が機能しなくなったら、かえって未処理の汚水が川に流されることになる。下水道を使用するマンホールトイレも同じです。
でも個別処理の浄化槽は、地震などの災害に強いことがわかっていて、災害時でも全部が一気に使えなくなるわけではない。だったら個別処理の浄化槽と集合処理の下水道が共存できる社会を創る必要があるんじゃないかと。
でも2010年当時は、下水道が完備されている地域では、トイレを下水道につながなければ、建設許可が下りないという法律があったんです。実は当時、私は自宅を新築したのですが、法律の問題で循環型トイレの設置が実現できなかったんです。
伊沢 そう、口では盛んに自然との共生が大事だと言いながら、法律が自然との共生を禁止しているんですよね。
熊倉 循環型トイレは設置できませんでしたが、自分の家でし尿を堆肥化して、それを使って畑で作物を作る、という暮らしをしてみたことはあります。自分は水洗トイレを毎日使いながら、循環型トイレの提案をし続けるのもおかしな話かな、と思ったので。