今井絵里菜(気候変動アクティビスト)× 伊沢正名(糞土師)
2018年5月にスウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんが始めた気候ストライキ「フライデーズ・フォー・フューチャー(Fridays For Future:以下FFF)」は世界中へ広がり、日本でも各地で学生を中心にFFF支部が結成されました。そんな若者のパワーに可能性を感じた糞土師は、FFF神戸を立ち上げた今井絵里菜さん(当時神戸大学4年生)に対談をお願いしました。本記事は2020年2月に京都で今井さんと糞土師で行った対談イベント「気候問題を考えるとき、責任ってなんだろう?」の一部を記事にしたものです。
グレタさんの強みとは?
伊沢 気候ストライキを最初に始めたのはグレタ・トゥーンベリさんですよね。
今井 グレタさんが国連でスピーチを行い、国会議事堂前で座り込みをしたのが始まりです。自分たちの生活スタイルは変えられるかもしれないけれど、政府や企業など大組織が排出する二酸化炭素や廃棄物の責任を言及しないといけない、と彼女は訴えています。
伊沢 今井さんはグレタさんの思いに賛同して活動をスタートされたんですね。
今井 はい。私は現在大学で環境経済学を学んでいる大学生です。気候ストライキを実際に始めたのは、グレタさんに続いて日本でもFFFが立ち上がった時からです。
FFFの支部を京都と神戸で立ち上げて、日本の他の支部とも連携して動いています。温暖化が深刻になり、100年後には日本の海岸の9割近くの砂浜が消失すると世界的権威や気象庁が報告していて、未来を生きる世代として危機感を感じながら活動しています。
伊沢 環境問題にはいつ頃から関心を持つようになったのですか?
今井 大学に入る前から考えていました。今日のイベントのテーマは「環境問題と責任」ですが、生きているだけで責任が発生するならその責任を自分はどう果たすべきかと考えてきました。
伊沢 そうですか。グレタさんが世界に登場したインパクトはすごかったですね。わずか16歳の少女が国連で各国首脳陣を相手に堂々と批判し、なぜあんなに強いのだろうかと思いました。
今井 ここ京都は、1997年に京都議定書が誕生した場所でもあります。つまり人類は20年ほど前から温暖化を認識し、国際社会で協力して対策してきたものの、目に見える効果は出ていません。科学者が議論を続けてきましたが、グレタさんの言葉を借りると「見せかけの解決」で、大人たちは根本的な解決法を見逃してきました。
京都市はSDGs(持続可能な開発目標)を推進していて、2019年に日本経済新聞の「全国市区・サステナブル度・SDGs先進度調査」で首位に立ったそうです。
SDGsは国連が定めた17項目の目標で、啓発のためそのバッジを企業の方が身につけたりしていますが、本当に企業内で持続可能なビジネスを行えているでしょうか。「ただの見せかけでしょう?」と見抜いて言葉で突けるのが、グレタさんの他の人にはない強いところだと思います。
伊沢 私が感じた強みは、言葉よりも、グレタさんがまだ16歳の若者であるということです。彼女はまだ社会に出ていないので生産活動をしていない、つまり加害者ではないんですよね。
今までの大人社会が生産活動を、平たく言えば金儲けをやってきて、そのマイナス面を押しつけられる立場にある。極端な言い方をすれば100%被害者の立場にいるわけで、彼女がもし加害者の片棒をかついで生産活動をしていたら、あの強さは持てないのではないか?
生産性というのは基本的に資源やエネルギーを自然から奪い、生産過程で汚染物質を出し、最終的にゴミを作り出すことだから、地球環境が悪化したのではないかと思うんです。ところで今井さんは原発反対の活動もしていたんですか?
今井 原発ではなく、神戸石炭訴訟の原告の1人として、石炭火力発電の増設に反対するための活動をしています。
伊沢 気候変動問題の基本ですもんね。
今井 そうですね。生産性ということについても、もっと考えていきたいと思っています。