活動に対するクレーマーに対して
伊沢 ところでデモやマーチに参加した人々は、その先の行動にどうつなげているのでしょう?
今井 デモ後に個々人の生活が変わるかというと、そこまでは推し量れないというのが実情です。私たちの役割としては、まずデモで声をあげる。その次は、一例をあげると、FFFに関心を持った個人の方が声をかけてくださって、歯磨き粉を自分たちで作るイベントをやりました。
デモには参加しにくいという人でも、そういうイベントなら行きたいという方もいて。参加者が次は発起人になり他の人の行動を促していくことが連鎖的に広がっていくのが理想ですね。でもそれは数値でデータ化できたわけではないので、希望的観測でしかないのですが。
伊沢 デモやマーチに参加する人々は、きっと私生活においても環境に優しい取り組みをしているはずだと期待してしまうのですが、実際はどうですか?
今井 全て把握できていないのでわからないのですが、例えば気候変動の解決を訴える団体があるとします。そこにSNSで反対意見がけっこう来るんですね。なぜ君たちは気候変動の対策を求めているのに、石炭や原発から発電された電気で動く携帯電話を使うのか、CO2を多く排出する飛行機に乗るのか、と。
伊沢 どう答えるんですか?
今井 気候マーチに参加するために皆なるべく車を使わず会場に来るんですが、多少はCO2を排出しておりマイナス面はあります。一方で多くの人に気候変動問題を知ってもらうというプラスの面も生まれている。それらを天秤にかけます。
伊沢 そうだよね。私も様々な批判を受けてきて、100点満点ではない限り批判は必ずついてきます。99点でも残りのマイナス1点をつついてきて「お前だってこんなに悪いんだ」と文句を言ってくる。そして自分のマイナス面をチャラにしようとする。
グレタさんはアメリカへ行く際にヨットを使っていましたが、あれが飛行機だったら石油を使っていると批判されかねない。彼女のように、批判されまいとしたら100点満点のやり方じゃないといけない。
今井 彼女は意識していると思いますが、そういう完璧なプレッシャーをあまり皆には持ってほしくないと私は思います。
伊沢 そうですね。それをやっていたら普通はもたないですよ。ちなみに私の最長ノグソ記録はご存知ですか?
今井 ……。
伊沢 13年と45日、4793日です。でもとうとうコケちゃった。それまでは挫折したら落ちこむかと思っていましたが、意外と平気でした。私は21世紀に入って15回だけトイレを使ってしまったのですが、地球全体のことを考えたらほぼ無意味ですよね。じゃあどうすれば意味があるのか?
1人1人が完璧を目指してもたいした影響力はないけれど、1万人が月1回だけノグソすると1年間で12万回分になる。それは私がこれまで46年かけて必死になってやってきた数の8倍。だから少しだけでも不完全でもいいんです。1人の努力は高が知れているけど、多くの人が気候変動のために少しだけでも動けば、すごい効果がある。
それでクレーマーをやっつけられると思うんですよね。人は数字に弱いから、1万人が1カ月にノグソを1回すれば1年で12万回という数字を出す。クレーマーに対してどう対処するかは大きな問題で、批判をきちんと防ぐことができるようになれば効果は相当高まると思います。