「生ききりたい」(後編)

ウンコは金なり

淳子 価値観の優先順位が、どれだけ稼ぐかというところにありますね。

伊沢 ちょっと話が飛ぶけど、お金のことで新しい糞土師言葉ができたんです。「お金はウンコである」と。お金もウンコも溜めこんではいけない。出して回せば、みんなが生き生きしていく。

長生きして人生がまだいっぱいあると思ったら人はお金を貯めこむけど、もういつ死んでもいいんだと思ったらお金に対する未練がなくなり、むしろ必要な所にどんどん使おうと……。そこに行きついたから、死を考えるってすごく意義があるなと思っている。

亮之介 お金のために死ぬ人もいるけど、でもウンコということは、出したら別の生き物から返ってくるんだよね。

伊沢 そうそう、返ってくる。ただ一方的に出しているわけじゃなくて、巡り巡って返ってくる。今の大企業みたいに内部留保ばかりやっているから景気が悪いけど、従業員に給料として出せばみんな元気になるんだよね。

亮之介 じゃあ、クソは天下の回りものって(笑)。

男は金と数字に走る

伊沢 お金の話になっちゃったけど、男社会って何なんだろうと思うんですよ。

淳子 本当ですよねえ。男が牛耳ってる限りダメだなと思います。発想がお金儲けにいくから。あとは科学技術やAIなどのほうへ行くことが多い。

旅先にて

伊沢 そう。つくづく思いますが、男ってダメ(笑)。

淳子 現代生理学の医師はほとんど男性ですよね。だから男性の発想で全てが進む。私が最初にガンだとわかったとき、ステージ4の末期だと言われて。

抗ガン剤ではなく自然にまかせるという選択肢もあったんですが、「そうすると残された時間があまりにも短い」と言われるわけです。そんなこと誰にもわからないんだけれども、「もうあと半年ですね」って言われちゃう。

伊沢 でも、実際にはその時からもう半年以上過ぎていますよね? もし抗ガン剤を使わなかったら、という意味ですか?

淳子 はい。私の場合は体のあちこちにガンが飛び火しているので手術は無理だと言われて、延命を考えるのが一番真っ当なやり方だという感じで。「何もしなければ半年ぐらい。抗ガン剤をやれば2、3年」だと言われたんです。

どちらにしても治らないけど、生きる時間が延ばせると、数字で突きつけてくるんですよね。何ヶ月とか何年とか。